8月の寒蘭管理

近年の夏場の温度の上昇は、5年10年前とではかなり異なり35℃を簡単に越えていきます。今まで以上に気温に配慮した環境づくりをしていかなければいけません。8月は花芽が伸びてきたり、新芽のズボ抜けが起こったりと寒蘭作りにおいて最も難しく、重要な時期です。

まずは、遮光をしっかりと。暗いくらいで大丈夫です!!

気温が30度を超える中で、遮光をせずに寒蘭を作ると葉焼けを起こしたり、蒸れたりします。何年も掛かって綺麗に作り上げてきた葉がわずか数日の日当たりに よって、簡単に傷んでしまいます。そうならないためにも、暗いくらいの遮光をして風通しを良くし、山の中の涼しげな環境を再現してあげましょう。そんなに暗くして大丈夫かなと思う方も多いかもしれませんが、当店では毎年夏の一番暑い時期は、蘭舎を暗くして過ごします。

遮光によって、葉が柔く長くなることを心配する方がいるかもしれませんが、秋口に涼しくなってから日をしっかり取り、風を十分に入れてあげることで、その心配は解消されます。それよりも、蘭の葉が黄色くなってしまっては、なかなか回復することは難しいですし、やっぱりきれいな生き生きとした葉が良いのではないでしょうか。

遮光というより、天井からの日差しをほとんどカットするといったほうが良いかもしれません。夏の山の中は葉が生い茂り、薄暗いはずです。

灌水は頻繁に!!

蘭舎内の風通しを良くすると、鉢が乾きやすくなります。灌水をしっかり頻繁にしてください。灌水をするということは、ただ蘭に水をあげるという行為ではあり ません。この時期の灌水には、暖められた葉や鉢を冷やし、空気を循環させ十分な酸素を値に供給することになります。頻繁な灌水は、乾燥を避け害虫の 活発化を防ぎます。乾燥した状態の蘭には、ハダニやカイガラムシその他の害虫がとても繁殖しやすくなります。灌水をこまめにあげることはとても大事です。

たくさん水をあげたいからと言って、いつでもあげていいわけではありません。

気 温の高い時間帯に灌水してしまっては、蘭が蒸れてしまいます。絶対に午前中・日中に水やり、葉面散布、殺虫・殺菌など水分を蘭に与えてはいけません。注意 してください。葉面に水滴があれば、その水滴がレンズの役目を果たし、葉を焼きます。筒状の新芽に水が溜まれば、せっかくの新芽に菌が繁殖したり、煮えた りしてダメにしています。

この時期に良く起こる最も嫌なズボ抜け対策をしてください!!

昔からよく夏に起こる新芽のズボ抜けほど、愛好家を落胆させる出来事はないと思います。せっかく一年かけて新芽を出し、順調に伸びてきたさなかに起こる悲劇、残念で仕方ありません。こうならないためにも、対策に気が抜けません。この時期の新芽は、葉が展開しておらず筒状のままの状態も多いと思います。筒状 の新芽には水分が残り易く、その水分によっておこる蒸れや煮え、もしくはその残った水分に気温の上昇により菌が繁殖して、害虫によって傷つけられた部分が 侵される新芽内の循環が妨げられて結果として“ズボ抜け”が起きてしまいます。

殺菌・殺虫をしっかり行いましょう。

キノンドー、ダコニールによる殺菌、スプラサイド・オルトランによる殺虫で寒蘭を守ります。

キノンドーは銅を含む殺菌剤で、銅は植物を丈夫にする等いう副作用もあります。ただし、化学反応を起こしやすいですので、混合は避け単体で使用してください。ダコニールは、対抗菌がいまだ存在しない優れた殺菌剤です。

スプラサイドは、強力な殺虫剤です。蘭の外側についた害虫をしっかりと駆除してくれます。強力な薬剤ですので使用時は肌の露出は避けてください。オルトランは粒剤を使用して、灌水時に蘭自体がオルトランを吸収して内側から害虫を寄せ付けません。どちらの殺虫剤ともに匂いが強いです。特にスプラサイド散布時は、ご近所・周りの方に配慮した使用を心掛けましょう。スプラサイドのみで殺虫を行う際は、1回目の散布から1週間後に2度目の散布を行うとより効果的です。1回目の散布で駆除できなかった、卵の状態の害虫を2回目の散布で撃退します。

8月は花芽が伸びてきます。9月になり花芽につぼみが確認できるようになると殺虫できなくなります。ですので、8月末から9月の初めにかけてしっかりと殺虫を行う必要です。蕾に殺虫剤がかかってしまうと変色など薬害を起こしてします場合がありますので、注意してください。

こ の時期は、潅水の間隔が短くなりますので、殺虫剤・殺菌剤は、潅水を行った次の日に散布するしましょう。殺虫・殺菌を行った次の日に潅水をすぐにしてしまうと、水で洗い流すことになってしまい、その 効果が薄れること防ぐためです。薬剤を散布する時には、風通しを良くしてしっかりと乾くように気を付けます。乾かない状態のままですと薬害を起す可能 性があります。

※ 劇薬を散布する際には、十分な注意が必要です。肌の露出を可能な限り避け、マスクなどを直接 吸引しない様にしなければいけません。雨合羽、帽子、ビニール手袋を着用すると良いかもしれません。その他、有効な殺虫剤としてはオルトラン粒剤が有効です。

とても大事な季節です、寒蘭には厳しい季節ですので出来る限りのことをして良い花を咲かせるために頑張りましょう。

 

蘭の管理

・20日過ぎから植え替え・株分けをしてもよいがまだまだ暑いので、9月に入ってからでも良いです。

・ハダニ・ハモグリバエ・スリップスなどの活動が活発になるので殺虫をしっかりとする。

・殺菌をしっかり行ってズボ抜けなどが起きないように対策をする

・蘭舎の風通しを良くし、外気温よりも温度が上がらないようにする。

日光

・日光を90%以上遮断する

灌水

1~3日おき

活力剤

ランパワーを毎月2回 この時期は、暑いですので1回でもよいでしょう。

殺菌

・キノンドー 100倍
・ダコニール 1000倍

殺虫

・スプラサイド 1000倍

・オルトラン粒剤